切なさが大人にこそ響く!ジュブナイル・ホラー『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』#野水映画“俺たちスーパーウォッチメン”第七十一回

TVアニメ『デート・ア・ライブ DATE A LIVE』シリーズや、『艦隊これくしょん -艦これ-』への出演で知られる声優・野水伊織。女優・歌手としても活躍中の才人だが、彼女の映画フリークとしての顔をご存じだろうか?『ロンドンゾンビ紀行』から『ムカデ人間』シリーズ、スマッシュヒットした『マッドマックス 怒りのデス・ロード』まで……野水は寝る間を惜しんで映画を鑑賞し、その本数は劇場・DVDあわせて年間200本にのぼるという。この企画は、映画に対する尋常ならざる情熱を持つ野水が、独自の観点で今オススメの作品を語るコーナーである。
思えば“思春期”と呼ばれる時期には、私も様々な悩みを抱えていた。太っていたし、前髪はゲゲゲの鬼太郎のように伸びていたし、ファッションセンスは最悪だったし、当時のコンプレックスを数え上げたらキリがない。以前本コラムで紹介した『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』は、そんな子ども時代の闇をじくじくとつつくようなジュブナイル・ホラーだった。そして、その続編である『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』が、満を持して公開された。そこには、一体どんな“END”が待ち受けているのか。
(C)2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
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米・メイン州の田舎町・デリーで、またも連続児童失踪事件が発生する。27年前「再び“それ”が現れたら戻ってくる」と誓ったルーザーズ・クラブのメンバーは、約束を果たすためデリーに戻ることに。しかし対峙した“それ”は、変幻自在に姿を変えて彼らを追い詰めてゆく。はたして、ルーザーズ・クラブは恐怖に打ち克つことは出来るのだろうか。

役者のシンクロ率とキュートな“それ”に注目

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前作の27年後が舞台となった本作では、大人になったルーザーズ・クラブの面々と、回想で登場する子ども時代の彼らの姿が同時に描かれている。そうした構成上、ルーザーズを演じる大人の役者には、子役に“似ていること”が条件として求められたという。
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ジェームズ・マカヴォイを始めとした大人役の俳優たちは、顔の造りがだけでなく、細かい表情の作り方まで子役に寄せているため、劇中の時間軸が切り替わっても違和感がなかった。中でも、リッチー役のビル・ヘイダーと、ベバリー役のジェシカ・チャステインは、子役自らが希望したキャスティングということもあってか、私にとってもイメージ通りだった。ことヘイダーの演じたリッチーは、本作における個人的MVPだ。本筋に触れるため明言は避けるが、リッチーが抱えるものの重さを表現する繊細なお芝居に、胸を打たれた。
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もちろん、ビル・スカルスガルドが続投する“それ”=ペニーワイズにも注目。彼は、前作では、クリーチャーに変化して怖がらせてくるだけでなく、口を大きく開けると見える過剰歯(私のお気に入り)や、ユーモラスなダンスで大きなインパクトを残した。本作のペニーワイズは、怖さよりもキュートさに磨きをかけて登場する。ルーザーズに対して、「寂しかったよ」とメッセージを残したり、風船で空を飛んだりと、まるで子どものような無邪気さを見せるのだ。怖がるルーザーズを尻目にキャッキャとはしゃぐ姿は、あの顔なのに何故だか愛らしい。

大人にこそ響く、エモーショナルな一面

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ルーザーズ・クラブの面々は“ルーザーズ=負け犬”と名乗るだけあって、体型や家庭環境など、皆何かしらの劣等感を持つ子どもたちだった。そして、その劣等感やトラウマを少なからず引きずったまま、大人になってしまったのだ。明らかに問題のありそうなパートナーと結婚したベバリー、コメディアンになったもののメンタルは弱いリッチーなど、彼らのプライベートを見ればそれは一目瞭然だ。

そんな彼らが、自分のトラウマを視覚化した敵と対峙するのは、自分自身と向き合うことにも似ている。目を背けていたことと向き合うのは、誰だって怖い。ましてや守るべきものや立場が出来た大人ならば、より恐怖を感じるはず。彼らの少年期は、恐怖を克服しなければ終わらない。ペニーワイズだけだけではなく、弱い自分自身を倒す必要があるのだ。
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『IT』は、『スタンド・バイ・ミー』のホラー版とも謳われているジュブナイルものだ。本作はその傾向が前作にも増して強いので、“怖さ”を期待しすぎない方が楽しめるだろう。怖いだけでなく切なさもはらんだ本作は、大人であればこそ心に響くポイントがあるはずだ。

私のように、最後に思いがけず、涙がこぼれるかもしれない。

『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』は公開中。

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