英国スパイ少女たちの新たな物語へつながる貴重なステージ!『プリンセス・プリンシパル THE LIVE Yuki Kajiura×Void_Chords』イベントレポ

2017年に放送されたTVアニメ『プリンセス・プリンシパル』。その物語を彩る音楽を生演奏で楽しめるライブイベント『プリンセス・プリンシパル THE LIVE Yuki Kajiura×Void_Chords』が、2019年10月19日(土)・20日(日)の2日間、千葉県「舞浜アンフィシアター」にて開催された。2020年4月には完全新作となる続編、その第1章の劇場公開も控え、ステージでは続編の主題歌もお披露目。この記事では、そんな興奮に沸いた2日目のステージをレポートする。

1曲目から観客総立ち! 新OPもお披露目されたVoid_Chordsオンステージ

TVアニメ『プリンセス・プリンシパル』は、『スパイ』×『スチームパンク』×『女子高生』がキャッチコピーだ。作品を語る上で非常にわかりやすい3要素ではあるが、そのワードから入れば人によっては「ははーん、そういうことね」と何かを察した気になってしまうかもしれない。正直、筆者もそのキャッチコピーから入っていたら、ややマニアックすぎる印象を抱いてしまい、作品に対する興味も若干薄れていたのではと思う。

作品を素直に楽しむには、できれば前情報は何も入れない方が良い。とは言え、初回の放送からもう2年。銃と刀が入り乱れる爽快なアクションシーン、ド迫力のカーチェイス、SFチックな反重力装置を用いた目まぐるしい空中戦……そして2転3転どころか何度も騙されっ放しで驚かされるドラマチックなストーリー展開など見どころをしっかり伝えねば、これから新しく興味を持ってもらえる方も増えてくれないのではとの不安もある。

とにかく世界観を何も知らない人は、まずは作品から触れて欲しい。ただそう言うなら、そんな何も知らない方へ向けて今回のライブをレポートする意味はない。既存のファンだけに向けて報告すれば良いだろう。しかし、それはあまりにももったいない。少なくとも、今回のステージがそう思えるほどの興奮に満ち溢れていたことは間違いない。

まず音楽家・高橋諒のアーティストプロジェクトVoid_Chordsが、前半パートの奏者として登場。新進気鋭のシンガーソングライター・麦野優衣を引き連れ、これまで発表してきたアニメ主題歌や、キャラクターソングを演奏した。
Takahashi(19日公演より)
Takahashi(19日公演より)

その楽曲一つ一つが、今回のステージではライブ用にアレンジされていた。例えば1曲目、OPテーマの『The Other Side of the Wall』は、出だしはピアノを中心とした少ない楽器編成でヴォーカルの声を際立たせ、後から一気に楽器が重なり、お馴染みの疾走感あふれる演奏へ。しかも麦野の「エブリワン、スタンドアップ!」の掛け声で1曲目から観客総立ちとなった。

2曲目の『Take Me Up Higher』から始まるキャラクターソングでは、歌詞をすべて英語にアレンジ。UKサウンドが随所に散りばめられた楽曲たちは、オールディーズ・ヒットソングのような格調高い名曲へと生まれ変わっていた。

10曲目に披露されたEDテーマ『A Page of My Story』では、ドラムや管楽器がリズムを刻んでいた軽快で可愛らしい原曲のサウンドから一転。ピアノとヴァイオリンの静かで優しい音色が響く、大人のバラードへと姿を変えた。

そして中には全く耳馴染みのない楽曲の披露も。9曲目は2020年4月に第1章の劇場公開が予定されている完全新作となる続編のために用意された新OPテーマソング『LIES & TIES』だ。
Void_Chords feat. Yui Mugino(19日公演より)
Void_Chords feat. Yui Mugino(19日公演より)

疾走感のあった『The Other Side of the Wall』とはまた異なり、ムーディで軽快なナンバーに仕上がっていた。TVシリーズの物語を経て成長したスパイ少女たちの、新しい物語を感じさせてくれるようなワクワクする1曲だ。しかもこの曲は、映画でも今回のライブに参加した麦野優衣が歌うという。「小さいころからの夢が叶いました!」と、麦野はステージで、興奮気味に喜びの声を伝えた。
『プリンセス・プリンシパル Crown Handler』第1章キービジュアル (C)Princess Principal Film Project
『プリンセス・プリンシパル Crown Handler』第1章キービジュアル (C)Princess Principal Film Project

Void_Chordsが披露した楽曲は、新曲も含め全10曲。決して少ない曲数ではないが、「もっと聴きたい! もっと聴きたい!」と観客に惜しまれながらも前半の演奏を終えた。そして後半からは、劇伴曲を手掛けた梶浦由記のライブステージが始まる。

『moonlight melody』全員合唱も! 一つ一つの楽曲制作秘話に心つかまれる梶浦由記ライブ

梶浦由記のライブでは、ステージ中央にぽっかり空いた空洞から、まるで戦隊ヒーローさながらに4人のヴォーカル、KAORI、KEIKO、YURIKO KAIDA、Joelleがせり上がってくるところからスタートした。1曲目はアニメのPVにも使われた『shadows and fog』。サックスの鋭いメロディと、神秘的なコーラス。どちらも本物の奏者が目の前にいることで、BGMではなく、完全にライブ楽曲へと生まれ変わっていた。
Kajiura_Utahime 左:Joelle、YURIKO KAIDA、KEIKO、KAORI(19日公演より)
Kajiura_Utahime 左:Joelle、YURIKO KAIDA、KEIKO、KAORI(19日公演より)

続いてスパイ少女たちがミッションに挑むときの楽曲『espionage trap』や、『tailing in darkness』なども。ステージのスクリーンにはアニメの映像も流されながら「あ、あのときの楽曲!」と思い出しながら聴ける演出がまた素晴らしい。また細かなところながら、演奏の途中には、舞台の後ろからスチームパンクをイメージするかのようなスモークも立ち込めていた。

怪しげでスリリングな楽曲が続いたが、6曲目にはうって変わって、少女たちの日常を描く可愛らしい楽曲『school girl life』を披露。続く『shall we dance?』もヴァイオリンの音色を中心とした優雅な音楽が展開する。特に『shall we dance?』は、梶浦曰く、ワルツを踊れるようにずっと続いていくイメージで、あえてあまり盛り上がりすぎないように作られていたそう。これを今回のライブで披露するに当たっては、スクリーンに映し出されるダンスシーンの、プリンセスのための伴奏として演奏することを心掛けたのだと言う。つまり生演奏がメインになる演奏だけではなく、曲によっては生演奏なのにあえてBGMに戻す!? という趣向を凝らしたステージで、まったく飽きがこない。

趣向を凝らしていると言えば、スパイ少女たちが任務として洗濯工場に潜入した際に歌われた日本語歌詞の労働歌、9曲目の『もひとつまわして』もそうだろう。今回はきちんと楽器演奏もついて、コーラスの女性たちによる歌声で送られた。
Kajiura(19日公演より)
Kajiura(19日公演より)

そして13曲目、最後に披露された『moonlight melody』。こちらも劇中では聴けなかったフルコーラスのバージョンだ。この楽曲を作ったときの梶浦のイメージでは、暗いサーカス小屋の中で美しいお姉さんたちが歌っているというものだったそう。そんなイメージと、まるでサーカス小屋のような「舞浜アンフィシアター」の円形ステージ、そしてコーラスの女性たちがまさしく一致するという奇跡が、今回のライブでは起こったのだった。

梶浦由記×Void_Chords! 最後にオールラインナップで『shadows and fog』再披露

梶浦由記のライブが終わり、再びVoid_Chordsと麦野優衣が再登場。最後は前半のバンド、後半のバンドも入り乱れて全員で『shadows and fog』がもう一度演奏された。コーラスにはもちろん麦野が歌い出しから参加。そして楽曲の盛り上がりでは1人1人の奏者が、ギターやベース、ヴァイオリン、キーボードは言うまでもなく、パーカッションやマニピュレーターに至るまで全員の即興ソロ演奏が挟まれる。贅沢と言うより、もはやハチャメチャでやりたい放題とも言える大盛り上がりの演奏に、観客の興奮も最高潮に達した。

本当に素晴らしいアニメは、その楽曲を聴いただけで涙が出てきそうになる。「舞浜アンフィシアター」のステージで、生バンドが曲を奏で、ヴォーカルが歌い・跳ねる。それだけで物凄い熱量が伝わってくるのは当然だが、ステージの大きなモニターに映し出されたTVシリーズ名場面の数々も手伝い、「ああ、また彼女たちの物語へ帰ってきた!」という感動もたくさんあった。

そんなイベントに参加できなかった方はモッタイなかった! と声を大にして言いたいところ。しかしご心配なく、今回のイベントの模様は12月にMUSIC ON! TVにて独占初放送が予定されており、2020年3月27日にはBlu-ray、CDの発売も決まっている。これから予習して楽しむにも、十分な時間がある。そして2020年4月10日公開の続編『プリンセス・プリンシパル Crown Handler』第1章に向けて、ぜひともまた興奮のボルテージを高めてほしい。

(取材・文:平原 学)

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